グローバルセキュリティ・宗教分野とは

執筆者:池内恵2019年4月1日

グローバルセキュリティ・宗教分野では、私の主要なフィールドである中東を中心に、ロシア・東欧・バルカン、あるいはアフリカや南アジアなども対象に含んでいる。

そういうこともあって、特任助教に、『フォーサイト』への寄稿でもおなじみの小泉悠氏を採用した。

日本の国立大学が忌避している「軍事研究」に外見だけは引っかかりかねないが、もちろん社会科学や地域研究・国際政治学の観点からロシアの軍事政策や思想を分析することに問題があるはずもない。

今後は私一人の個人技だけでなく、組織的に調査研究を行なっていく。

大学は、特に国立大学は、明治以来の近代の伝統に縛られており、そう簡単に組織改変はできない。変化はもっぱら基盤的予算の削減による縮小という形で起こっている。

先端研という、東大の中で例外的に「分野」を臨機応変に設立・改廃し、外部から予算を取り入れて特任で機動的に研究者を雇用できる組織を用いて、大学の新たな可能性を探っていきたい。

とはいえ、そのためには私自身の時間と労力を、分野の設立・拡充のための資金や制度に関する仕事に割かざるを得なくなっている。

しかしここで私がやらねば、他のより保守的・伝統的な学部学科ではいっそうできない。東大以外の国立大学も同様である。優秀な方々は多くいるが、安定的な制度の中に収まると、「やるべきだ、やる必要がある」と言ってはみても、実際にはやらなくなる。

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