米ノースダコタ州のシェールオイル・ガス生産現場。生産者の苦悩は続く(C)AFP=時事

 

 毎日、膨大な量で流れてくるエネルギー関連の記事を読んでいて、ふと「これは錯覚だよね」と思うことがある。

 世界の3大産油国となったアメリカ、ロシアおよびサウジアラビア(以下サウジ)の「長」たちの発言を、あたかも3者が同一レベルの「権限」を持っているかの如く書かれている記事を読んだときだ。

 サウジは「サウド家のアラビア」だから、エネルギー政策についてもサウジの「長」が発言することは、すべて実行可能なことだ。

 ロシアは共産ソ連からは変身したとはいえ、国内最大の石油会社「ロスネフチ」や圧倒的なシェアを持つ天然ガス会社「ガスプロム」の過半数の株式を保有していることに加え、反政府的行動を取ることが民間企業にとっても不利なこととの認識が普遍的に存在しているから、サウジほどではないが、「長」の発言が行動として実現する可能性はきわめて高い。

 だが、アメリカはどうだろうか?

「自由」と「民主主義」を国是とするアメリカでは、民間企業が経済行動を「自由」に行えるように、行政官庁の干渉は極力排し、一方で「大企業」の横暴を許さないために強力な「独占禁止法」(アメリカでは「反トラスト法」)が存在している。「長」の発言がそのまま実行されるかどうかはまったく分からない。すべては、自由な経済行動の「結果」として表れてくるもので、そこに「長」の意向が直接的に組み込まれることはないとみていい。

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