この機会に『万葉集』の意味を正しく考えてみては(C)時事

 

 平成31(2019)年4月1日、新元号を菅義偉官房長官が発表した。安倍晋三首相は記者会見で、「人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つ」ことを託したと語っている。

 画期的だったのは、漢籍ではなく日本最古の歌集『万葉集』から2文字を選んだことだ。

「令和」は、『万葉集』巻5に残されている。「梅花(ばいくわ)の歌三十二首」の歌そのものではなく、序文に天平2(730)年正月13日に帥老(そちのおきな=大伴旅人=おおとものたびと=)の宅に集まって宴会をくり広げたこと、時に初春の「令月(よい月)で、気は良く風は穏やかだ(風和=やはら=ぐ)、とある。この中の「令」と「和」を組み合わせている。

 日本の元号は、7世紀半ばの「大化」以来「平成」に至るまで、計247あり、漢籍から2文字を選んできたが、「令和」は、歴史上はじめて日本の古典から拾ってきた。これは、画期的だと思う。

 ただし、この序文、万葉仮名(大和言葉を漢字で表記する)ではなく漢文で記されている。中国の南北朝時代に記された『文選』の「帰田賦(きでんのふ)」の一部を借用したらしいから(「仲春令月、時和し気清らかなり」)孫引きとなり、批判する学者も少なくない。

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