ヒトラーが欲したものとは(C) 2018 - 3D Produzioni and Nexo Digital - All rights reserved

 

 美術品は、移動する。それは、美術品が一部を除いて、土地や建物のような不動産ではなく、動産であるからだ。その特性は、美術品に多国籍性と、国際マーケットで活発に取引される財産の地位を付与し、多くの国をまたいで売買されたり、贈与されたりしている。ポケットやカバンに忍ばせた小型の作品が、密輸によって遠い距離を移動することもしばしば起きる。

 だが、美術品の移動にはもう1つの形態がある。略奪である。略奪美術品(文化財)の問題は、決して目新しい話ではない。いつの時代も美術品は略奪を繰り返されながら、その価値を高めていった。英国が誇る大英博物館に置かれている中東・アフリカ・アジアの膨大で貴重なコレクションには、広い意味で略奪美術品と言えるものが多数含まれている。

 大英博物館と並んで「泥棒美術館」との悪名をいただくフランスのルーブル美術館もまた、ナポレオン・ボナパルトがヨーロッパ征服のなかで略奪した品々を飾っている。ドイツ文学者の中野京子氏は、ナポレオンは「当然のように各地の城や邸宅から膨大な数の絵画や彫刻、発掘品や工芸品を強奪した」と言う。その結果、いまのルーブルの豊富なコレクションが生まれた。

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