「激安リーマン」に飛びついた野村の巧拙

執筆者:鷲尾香一2008年11月号

実質三日間で買収という手の早さ。だが、カルタ取りなら「おてつき」ではとの声も……。「ある経済誌が取材に来た時に、野村が経営破綻したリーマン・ブラザーズを買収したことについて感想を聞かれたので、『野村は素晴らしい』と言っておいた。しかし、本音の感想は、『野村もバカなことをしたなぁ』ということだ」 十月一日、野村証券出身で現在、SBIホールディングス代表取締役CEO(最高経営責任者)の北尾吉孝氏は、全社朝礼の席上で、居並ぶ千名近い社員を前にこう述べた。 米国のサブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅ローン)問題に端を発した欧米の金融危機は、国際的な金融機関の再編にまで発展した。九月十五日には米証券四位のリーマン・ブラザーズが経営破綻。リーマンのアジア・太平洋部門と欧州・中東部門、さらにインド拠点を買収したのが、野村証券を傘下に抱える野村ホールディングスだった。 野村は海外に活路を見出そうとしていた。国内事業が完全にジリ貧となっていたからだ。 独占状態に近かった新規上場企業の主幹事業務は、二〇〇〇年代に入ると大和証券、日興証券などの猛追を受け、さらに近年ではみずほフィナンシャルグループ傘下のみずほインベスターズ証券、新光証券、みずほ証券の連合にまで迫られていた。

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