はるか向こうに見える、クライス油田。石油はサウジアラビアに莫大な富をもたらした (C)AFP=時事

 

「エネルギーの部屋」運営者の岩瀬昇さんの著書『超エネルギー地政学 アメリカ・ロシア・中東編』(エネルギーフォーラム)が、目下エネルギー業界で話題になっている。

 同書では、三井物産、三井石油開発などで長年、石油取引の最前線を体験してこられた斯界の第一人者である岩瀬さんが、国家戦略と不可分の関係にあり、特に外交の一助となるべき「地政学」をエネルギーという観点で取り上げ、国際関係のこれまでと今について、実体験を交えて平易に解説している。

 著者の岩瀬さんご自身に、読みどころを聞いた。

2大国の「石油の世紀」

――日本人は石油といえば、すぐに中東を思い浮かべる。だが実は長年にわたって、世界の石油はアメリカとロシア(ソ連)が両巨頭だったということを再認識しました。

 その通りで、アメリカの今日があるのは石油のおかげなのです。19世紀半ばに機械掘りの商業生産がはじまり、次々と油田が発見されて、世界で最初にして最大の産油国になった。世界に占めるアメリカの比率が50%を切ったのは、1953年のこと。1930年ぐらいまではそれこそ8割ほどを占めていた。だから、アメリカ国内での石油価格が最も大事だった。

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