ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は「強いサウジアラビア」を目指しているのか (C)EPA=時事

 

 地政学と悪性のポピュリズムが相乗効果を起こし、世界の退廃をもたらしている。ユーラシアの強権国家が筋力をひけらかし、海洋の自由主義陣営は撤退し、リベラル国際秩序は磁力を失った。

 世界の退廃が表れるのが、国際枠組みのほころびだ。貿易協定や環境協定の反故に続き、安定の要である核兵器の縮減合意にも退廃は及んできた。中距離核戦力(INF)全廃条約が消滅し、疑心暗鬼の米ロが核軍拡の道を歩み始めている。

 もう1つの核秩序である、核不拡散の枠組みも揺さぶられていくはずだ。核は地政学的な兵器であるとともに、国の威光の源となるために悪性のポピュリズムに巻き込まれやすい。まさに今の時代を象徴する兵器なのである。

砂漠に現れた原子炉

 注目されているのが、サウジアラビアが最初の原子炉を近く稼働させるというニュースだ。首都リヤド郊外のアブドルアジズ国王科学技術都市の南西にある原子力研究施設の衛星写真は、核燃料を収めるチューブ型の容器が出来上がった様子をくっきりと映し出している。国際原子力機関(IAEA)の元高官によると、30キロワットの研究用小型原子炉で「年内に完成し来年には電気を送り出す」という。

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