「サウジ原子炉稼働」が呼ぶ「中東核拡散」という不吉な図絵

ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は「強いサウジアラビア」を目指しているのか (C)EPA=時事

 

 地政学と悪性のポピュリズムが相乗効果を起こし、世界の退廃をもたらしている。ユーラシアの強権国家が筋力をひけらかし、海洋の自由主義陣営は撤退し、リベラル国際秩序は磁力を失った。

 世界の退廃が表れるのが、国際枠組みのほころびだ。貿易協定や環境協定の反故に続き、安定の要である核兵器の縮減合意にも退廃は及んできた。中距離核戦力(INF)全廃条約が消滅し、疑心暗鬼の米ロが核軍拡の道を歩み始めている。

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執筆者プロフィール
杉田弘毅(すぎたひろき) ジャーナリスト・明治大学特任教授。1957年生まれ。一橋大学を卒業後、共同通信社でテヘラン支局長、ワシントン特派員、ワシントン支局長、論説委員長などを経て現在客員論説委員。多彩な言論活動で国際報道の質を高めたとして、2021年度日本記者クラブ賞受賞。BS朝日「日曜スクープ」アンカー兼務。安倍ジャーナリスト・フェローシップ選考委員、国際新聞編集者協会理事などを歴任。著書に『検証 非核の選択』(岩波書店)、『アメリカはなぜ変われるのか』(ちくま新書)、『入門 トランプ政権』(共同通信社)、『「ポスト・グローバル時代」の地政学』(新潮選書)、『アメリカの制裁外交』(岩波新書)『国際報道を問いなおす』(ちくま新書)など。
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