圧勝したゼレンスキー新大統領だが…… (C)EPA=時事

 

 4月21日のウクライナ大統領選・決選投票で、70%以上の得票で圧勝したウォロディミル・ゼレンスキー氏(41)は、政治経験のないコメディー俳優という変り種だ。東部の内戦や経済危機が長期化し、国民の約1割が欧州など国外に移住するという停滞の中で、既存政治家への不満が高まり、政治・社会の刷新を訴えて勝利した。政治基盤を持たず、国民的人気が頼りという綱渡りの治世となるが、その勝利は旧ソ連圏全体を覆う閉塞感に変化をもたらす可能性もある。

巨大スタジアムのテレビ討論

 決選投票は、ゼレンスキー氏と現職のペトロ・ポロシェンコ大統領(53)による一騎打ちとなり、投票2日前の19日、7万人を収容するキエフの五輪スタジアムで両候補による討論会が行われ、全国にテレビ中継された。

 大学時代から社会風刺のコメディアンとして活動してきたゼレンスキー氏は、「私は政治家ではない。現在のシステムを打破するために立ち上がった一市民だ」「私はポロシェンコ大統領の失政と約束の産物だ」「大富豪の大統領を持つウクライナがなぜ最貧国なのか」などと巧みに政権交代を訴えた。

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