《入目籠形ボンボニエール》大正天皇即位礼 大正4年(1915) 学習院大学史料館蔵

 

 「明治150年記念 華ひらく皇室文化―明治宮廷を彩る技と美―」展が東京の学習院大学史料館と泉屋博古館(せんおくはくこかん)分館で開かれている。2018年から名古屋、秋田、京都を巡回し、2019年3月から最後の東京に移った。明治期の皇室文化にかかわる工芸品を中心とした品々を展示しているが、興味深いのは饗宴外交が皇室文化の発展に大きく寄与していることである。

意匠を凝らしたボンボニエール

 本展は、明治期における皇室の美術工芸品に対する育成・奨励・保護という側面から、絵画、調度品、衣装、食器など、さまざまな分野にわたる品々を展示している。

 欧化政策に伴う殖産興業の一環で、明治初期から国内では展覧会や博覧会が盛んに開催され、そうしたイベントでは天皇、皇后皇室の行幸啓や、宮内省(当時)による出品作品の買い上げが積極的に行われた。また天皇の功労者への下賜品や慶事での贈呈品、皇室への献上品という形で作家や工芸家の創作意欲を盛り立てた。

 いまに引き継がれているそうした工芸品の品々を1つ1つ辿っていくと、饗宴外交が文化の興隆に大きな舞台回しの役を果たしてきたことが見えてくる。明治天皇は諸外国の駐日公使や外国使節の接待のため、頻繁に晩餐会や午餐会を催したが、衣装、食器、装飾品、引き出物など、展示されているさまざまな工芸品が饗宴と密接に繋がっている。饗宴が幅広い裾野の文化を巻き込むことを改めて感じさせる。

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