それぞれの思惑が絡み合い、世界秩序は崩壊に向かうのか…… (C)時事

 

 戦後秩序は崩れ去ろうとしているのだろうか。

 第2次世界大戦が終了した時、米国は戦後秩序のグランドデザインを描き、それに従い世界秩序を再編した。通常言われるのは「政治の国連」と「経済のブレトン・ウッズ体制(第2次世界大戦後の国際経済体制)」だが、ここでは、ヨーロッパの視点から見てみたい。米国による、いわゆる戦後の自由民主主義体制は政治評論家のロバート・ケーガンが国際政治経済誌『フォーリン・アフェアーズ』で指摘する通り、以下4つの柱で構成されていた。

「価値の共有」も不可欠

 第1が、米国による安全保障の提供だ。これは2つの意味を持つ。ソ連に対するものとドイツに対するものだ。ソ連に対する意味合いはいうまでもない。ドイツに対してヨーロッパは、いわゆる「ドイツ問題」を長く抱えていた。

 1871年、突如としてヨーロッパ大陸の中心に出現した巨大なドイツ帝国は、その後のヨーロッパの運命を翻弄した。何といっても、支配する領域、国力ともに大きすぎる。バランスを失ったヨーロッパは、方向舵を失った小舟の如く波にもまれ時代に翻弄されていった。戦後、米国がヨーロッパに安全保障を提供するとした意味は、ソ連に対抗することもさることながら、この「ドイツ問題」への回答でもあった。ドイツ一国に英仏が合同しても対抗できない。しかしここに米国が加われば均衡が達成される。ここで初めてバランス・オブ・パワーの観点から「ドイツ問題」が解決された。

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