金正恩「新体制」と「対米交渉」の行方(5)

執筆者:平井久志2019年5月1日
崔龍海氏(左)の存在感は増したのか (C)時事

 

 北朝鮮は4月11日、最高人民会議第14期第1回会議を開催した。最も注目された金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の新たな職責への就任はなく、国務委員長として再選された。ただ、最高人民会議では憲法の改正も行われたのだが、その内容は公表されなかった。改正された憲法で「国務委員長」の権限がこれまで以上に強化された可能性はある。

「全ての朝鮮人民の最高代表者」

 崔龍海(チェ・リョンヘ)氏は最高人民会議で金党委員長を国務委員長に推戴する演説を行ったが、その中で金正恩氏を「世界が公認する現世紀の最も傑出した国家領導者」と称賛し、「敬愛する金正恩同志を全ての朝鮮人民の最高代表者であり共和国の最高領導者である朝鮮民主主義人民共和国国務委員会委員長として高く推戴することを本最高人民会議に丁重に提議する」と述べた。

 さらに党機関紙『労働新聞』は4月14日付1面で、金党委員長が国務委員長に再選されたことを祝う平壌での中央群衆大会を報じ、この中で「金正恩同志は全ての朝鮮人民の最高代表者であり共和国の最高領導者である朝鮮民主主義人民共和国国務委員会委員長に高く推戴され」と表現した。そしてこれは、金国務委員長を表す「全ての朝鮮人民の最高代表者であり共和国の最高領導者」が定式化された可能性を示唆した。改正された憲法における国務委員長の規定と関係している可能性もある。

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