英国の「移民」考(下) 「EU市民」から「本当の移民」へ
2019年5月9日
英国の「移民問題」は、これからどこに向かうのか。欧州連合(EU)離脱が実現すると、「移民」はどうなるか。
欧州社会論の第一人者で英リーズ大学教授のエイドリアン・ファヴェルと、同大学特別研究員ロクサナ・バルブレスクは、離脱に伴う問題点を検証した論考「ブレグジット、『移民』と反差別」を2018年に発表した(パトリック・ダイアモンド他編『ブレグジット政治のラウトレッジ・ハンドブック』所収、未邦訳)。この研究の助けを借りながら、今後を展望してみたい。
都合のいい存在だった
移民は通常、政府の政策よりも、経済原理に沿って動く。よい仕事やよい生活を求めて、人は流れる。英国に多数流入したのは、そこが魅力的な国であり、労働力を求めていたからに他ならない。
このような観点から、同論考は、2004年のEU東方拡大に対して英ブレア政権が採った「移民」無制限受け入れ策「オープンドア政策」を肯定的に評価している。この措置は「移民」の急増を招いたとして、しばしば失政扱いされてきたが、むしろ英国の労働力不足を補ううえで不可欠だったと考える。
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