【ブックハンティング】世間に知られたくない「真実」

『知ってはいけない薬のカラクリ』(谷本哲也著、小学館新書)

執筆者:久坂部羊2019年5月15日
製薬業界と医師らが「隠したい」真実とは――(写真はイメージです)

 

 だれしも人には知られたくないことがある。当人にとって知られたくないことは、たいてい他人にすれば、ぜひ知りたいことである。

 本書『知ってはいけない薬のカラクリ』(谷本哲也著、小学館新書)に書かれているのは、製薬業界や医師(特に大学教授とか医学界で高名な医師)にとっては、できれば知られたくない事実ばかりだろう。

 製薬会社も医師も、必ずしも悪いことをしているわけではない。だが、情報が公開されると、誤解される恐れがあるので、できれば隠しておきたいというのが本音ではないか。しかし、頬被りを続けていると、いつまでも世間の疑念は晴れない。

 製薬会社からカネをもらった医師が、患者の利益より、製薬会社の利益を優先しているのではないか。また、薬の値段や適応症を決める立場の医師が、製薬会社から多額のカネを受け取って、判断が製薬会社に有利なものになっているのではないか。いわゆる“利益相反”である。本書が指摘する疑念は、ほぼこの2点に集約できる。

1種類で1兆円の処方薬

 以前はたしかにひどい状況だった。私自身も外科医時代に、製薬会社から、てっちりや高級ステーキ、テニスツアーやカニ食べ放題の旅行などの接待を受けた。もちろん下っ端の私だけでなく、副院長から部長、医長を含む医局員丸ごとの接待である。麻酔科医のときには皆無だったので、首を傾げつつも、外科は派手だなと思った記憶がある。

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