フジャイラ沖船舶への「破壊工作」の実態が一向に明らかにならないまま緊張が高まるペルシア湾岸情勢は「霧の中」にある。水面下での工作が絡む場合、大国の諜報機関ですらそう即座に明らかにできないものであるから、目先の情報に踊らされることは時間と労力の無駄である。

公開情報から筋道を立ててペルシア湾岸の紛争のリスクについて考えるとすると、参考になるのが、筆者も参加した、PHP総研が例年、年末年初に取りまとめて発表しているグローバルリスク分析である。

昨年12月9日に公開された2019年版(PDFで全文がダウンロードできる)では、「Risk9」(16頁)で「米国の対イラン圧力政策が引き起こす中東不安定化」を取り上げている。

その中で、

「イラン国外の反体制派や亡命者組織が、外部からイランの揺さぶり工作を仕掛け、イランの画策を偽装したテロ等が発生する可能性もある」

「米・イスラエルはイランへの挑発を強めるため、イラン絡みの怪事件やサイバー攻撃等、突発的な事件が発生する可能性もあることに要注意」

といった注目点を挙げている。「代理勢力(proxy)」を使った撹乱工作を発端に、大きな紛争に発展しかねないことの危惧である。

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