北朝鮮「ミサイル発射」挑発の真意(1)

執筆者:平井久志2019年5月22日
5月4日からわずか5日後の9日、「火力打撃訓練を指導」した金正恩党委員長[KCNA](C)EPA=時事

 

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は、4月17日に「新型戦術誘導兵器」の試射を参観、指導した。5月4日には、北朝鮮東部の虎島半島付近で大口径長距離ロケット砲や戦術誘導兵器を使った火力打撃訓練を指導。続けて5月9日には、平安北道亀城で複数の長距離打撃手段による火力打撃訓練を指導した。これらの訓練では短距離ミサイルの発射が行われたとみられ、北朝鮮は国連安全保障理事会の制裁決議に違反する行動に出た。

 ハノイの米朝首脳会談の決裂後、米朝の対話の糸口は見つからず、米国は北朝鮮の完全武装解除を要求する「ビッグディール」を突き付けて、北朝鮮の態度変化を待っている。

 北朝鮮側は、ドナルド・トランプ米大統領と金党委員長の良好な関係を強調しながらも、「ビッグディール」を取り下げない米国に苛立ちを強めている。マイク・ポンペオ米国務長官やジョン・ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)への非難攻勢にとどまらず、短距離ミサイル発射という「抑制された挑発」を突き付けて状況の転換を図ろうという動きに出た。その内実や背景、今後の動きについて検証した。

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