「失敗首相」テリーザ・メイの「罪と罰」

執筆者:国末憲人2019年5月27日
本人は、やはり悔しかろうが(C)AFP=時事

 

 英国首相のテリーザ・メイが、とうとう辞意を表明した。やめる、やめると言われて数カ月。サンドバッグ状態に陥りながらへこたれず、EU(欧州連合)からの離脱協定案を議会で3回否決されながら4度目の提案を目指したものの、その日は来なかった。辞任は6月7日で、その後に首相を担う保守党党首選が始まる。

 5月24日、首相官邸前であった辞意表明の演説を、彼女はこう結んだ。

「私は悪感情を抱かず、むしろ我が愛する国家に仕える機会を与えられたことへの、大いなる永遠の感謝の念とともに、間もなくこの職を去ります」

 その哀愁を帯びた涙声には、引きずり下ろされた無念さが逆ににじんでいた。『ガーディアン』紙によると、その姿をテレビで見ていた官邸スタッフの中には、一緒に泣き崩れた人もいたという。

 しかし、英国民一般に、彼女に同情する意識は薄い。調査会社「ユーガヴ」の世論調査では、67%が「辞めることになってよかった」と回答し、「よくなかった」の16%を大きく上回った。彼女への評価も、31%が「ひどい首相」、19%が「不十分な首相」だったのに対し、「偉大な首相」は2%、「いい首相」は17%にとどまった。

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