ネットに教育コンテンツがあふれる時代に、子どもを学校に行かせる必要があるのか。小学生YouTuberの不登校を巡って議論が巻き起こっている。画一的で旧態依然とした日本の教育への失望もあり、賛否は割れているようだ。

 一方で、日本の子どもの6~7人に1人が相対的貧困状態にあり、経済格差が教育格差につながる根深い問題への関心も高まっている。

 私自身の考えは後述するとして、この「子どもの教育機会」を考えるうえで興味深いマンガを紹介したい。古谷実の『僕といっしょ』(講談社)だ。

若者の苦境と閉塞感

古谷実『僕といっしょ』(講談社文庫版) 

 『僕といっしょ』は奇才・古谷にとって、デビュー作『行け! 稲中卓球部』(講談社)に次ぐ作品だ。改めて言うまでもなく『稲中』はギャグマンガ史に輝く傑作であり、その狂気をはらんだパワフルな面白さは、私にとって『マカロニほうれん荘』(鴨川つばめ、秋田書店)以来の衝撃だった。何年かに1度、忘れたころに読み返すたび、問答無用で爆笑させられる。

 『稲中』のテイストを残した『僕といっしょ』も、随所で光るギャグの切れ味は落ちていないが、より社会的なテーマ性をもった作品になっている。描かれるのは、後続作の『グリーンヒル』『ヒミズ』(講談社)にも共通する、子どもや若者の苦境と閉塞感だ。

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