米国民を襲う米NSA「サイバー兵器」の猛威

執筆者:山田敏弘2019年6月14日
NSA本部。国民を守る盾が攻撃する側に……(C)AFP=時事

 

「トヨタはピックアップ・トラックを製造しているが、誰かがトヨタ製のトラックの前面に爆発物を取り付け、防御線を超えて群衆の中に突っ込んだからといって、それはトヨタの責任になるのだろうか?」

 これは、2019年3月にNSA(米国家安全保障局)のマイケル・ロジャース前長官がメディアの取材に対して発したコメントだ。ロジャース前長官は、NSAが国外のターゲットに向けて使ってきた極秘の「サイバー攻撃兵器」が、外部の何者かの手に渡り、それが世界中で悪用され、サイバー攻撃に使われている現実について問われ、こう答えた。

 そして今、この発言が物議を醸しているのである。というのも、このトラックの前面に付けられた「爆発物」が、米国内の自治体などにも深刻な被害をもたらしているからだ。

約20億円の被害

 2019年5月7日、メリーランド州ボルチモアをランサムウェア攻撃が襲った。

 ランサムウェアは、日本では「身代金要求型ウイルス」と訳されるサイバー攻撃で、ターゲットのシステム内にあるパソコンに感染を広げ、次々とパソコンを勝手に暗号化して使えなくしてしまうマルウェア(悪意ある不正プログラム)だ。そしてパソコンの画面に、「身代金を払えば暗号を解いてやる」とメッセージを表示し、ビットコインなどの仮想通貨で身代金支払いを要求する。日本でも被害が出ているサイバー攻撃である。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。