決して「高騰」はしていないのだが(『FT』2019年6月20日
 

 ペルシア湾からホルムズ海峡を抜けたところに広がるオマーン湾で先週、2隻のタンカーが何者かに攻撃された。1隻はマーシャル諸島船隻で、実質ノルウェー企業がオーナーの「白物」(ガソリン、ナフサ、灯油などの軽質石油製品を指す。一方、重油や原油は「黒物」と呼ばれている)タンカーであり、台湾の国営・中国石油向けに石油化学の原料であるナフサを積載していた。もう1隻はパナマ船籍の、日本の会社が実質オーナーの化学品タンカーで、シンガポールとタイ向けに基礎化学品の一種であるメタノールを輸送しているところだった。

 攻撃されたころ、安倍晋三首相がイランの最高指導者ハメネイ師と会談中であったこともあり、日本を標的にしたものだ、とか、すわホルムズ海峡が封鎖される前触れだ、とか、まるでテレビのワイドショーの話題のような報道をするところすら現れた。

 事件の影響で原油価格は高騰した、と報じる記事も散見され、マスメディアを始めとする世の中一般のエネルギー・リテラシーは、依然としてこんなものなのか、と筆者はため息をつくばかりだった。

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