「葛西天皇」の「肝入り」に暗雲が垂れ込めている(ラフード米運輸長官=当時、右=とJR東海の葛西敬之会長=同、左=。2010年5月)(C)時事通信

 

 やはりというか、案の定というか、リニア中央新幹線の開業スケジュールが怪しくなってきた。2027年開通予定の品川〜名古屋間(285.6キロ)の工事のうち、南アルプストンネル(山梨県早川町〜長野県大鹿村、全長約25キロ)の静岡工区(静岡市葵区、8.9キロ)について地元の了解が得られず、着工できない状態が続いている。

 危機感を募らせた事業主体のJR東海は「このままでは開業の時期に影響する」と着工反対急先鋒の川勝平太・静岡県知事(70)を標的に、世論を味方につけるべく画策する。ところが、名古屋駅周辺の用地買収の遅れやトンネル掘削に伴って発生する残土処理問題など、工事が進まない事情は他にも山積。一部の関係者からは「2027年の開業はほぼ絶望的」との声も漏れてくる。工期遅延のコストアップは1年で数千億円、2年なら1兆円超との説もある。本格着工から4年半。早くもJR東海の尻に火が付いてきた。

口火を切った「JR東海」金子社長

 JR東海VS.静岡県――。一連の舌戦が口火を切ったのは5月30日、JR東海が東京都内で開いた記者会見だった。社長の金子慎(63)がリニア工事の進捗状況について「静岡は他の工区に比べ遅れており、後の工程で取り戻すことが難しくなりつつある」とし、2027年の品川〜名古屋間開業が遅れる可能性を示唆したのである。

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