「JR東海VS.静岡県」舌戦やまぬ「リニア」破綻への道

執筆者:安西巧 2019年6月24日
エリア: アジア
「葛西天皇」の「肝入り」に暗雲が垂れ込めている(ラフード米運輸長官=当時、右=とJR東海の葛西敬之会長=同、左=。2010年5月)(C)時事通信

 

 やはりというか、案の定というか、リニア中央新幹線の開業スケジュールが怪しくなってきた。2027年開通予定の品川〜名古屋間(285.6キロ)の工事のうち、南アルプストンネル(山梨県早川町〜長野県大鹿村、全長約25キロ)の静岡工区(静岡市葵区、8.9キロ)について地元の了解が得られず、着工できない状態が続いている。

 危機感を募らせた事業主体のJR東海は「このままでは開業の時期に影響する」と着工反対急先鋒の川勝平太・静岡県知事(70)を標的に、世論を味方につけるべく画策する。ところが、名古屋駅周辺の用地買収の遅れやトンネル掘削に伴って発生する残土処理問題など、工事が進まない事情は他にも山積。一部の関係者からは「2027年の開業はほぼ絶望的」との声も漏れてくる。工期遅延のコストアップは1年で数千億円、2年なら1兆円超との説もある。本格着工から4年半。早くもJR東海の尻に火が付いてきた。

カテゴリ: 経済・ビジネス 政治
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
安西巧(あんざいたくみ) ジャーナリスト 1959年福岡県北九州市生まれ。1983年早稲田大学政治経済学部政治学科卒、日本経済新聞社入社。主に企業取材の第一線で記者活動。広島支局長、編集委員などを歴任し、2024年フリーに。フォーサイトでは「杜耕次」のペンネームでも執筆。著書に『経団連 落日の財界総本山』『広島はすごい』『マツダとカープ 松田ファミリーの100年史』(以上、新潮社)、『さらば国策産業 電力改革450日の迷走』『ソニー&松下 失われたDNA』『西武争奪 資産2兆円をめぐる攻防』『歴史に学ぶ プロ野球16球団拡大構想』(以上、日本経済新聞出版)など。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top