タンカー攻撃事件について、ポンペオ米国務長官(右)はただちにイランを非難したが……(C)AFP=時事

 

 6月13日現地時間午前6時45分(日本時間同日午前11時45分)頃、ホルムズ海峡オマーン沖で日本の海運会社所属タンカーが砲弾攻撃を受け、1回は機関室付近に出火したが乗員が消火、2回目は甲板に着弾したため全員が脱出退避し、付近の船舶に救助されたと会社説明があった(『読売新聞』6月14日)。

 米国中央軍は、「攻撃はイランが行った」とし、吸着型の爆発物と断定(「米国が公表した写真の損傷部分」を見た笹川平和財団小原凡司上席研究員は、船体に取り付ける「リムペット・マイン」の可能性を指摘)、イラン革命防衛隊の小型ボートが日本の海運会社タンカーに横付けして不発弾を回収したと発表した(『読売新聞』6月15日)。

 海運会社発表の「飛来物による攻撃」内容と、米側発表の「吸着型爆発物の仕掛け」に食い違いがある。しかし、米国が突如、「もっともな証拠」を掲げて犯人を決めつけた発表についても、信憑性には疑問が残る。

 この時、安倍晋三首相は、米国とイランの緊張関係改善のため、イラン最高指導者アリ・ハメネイ師とハッサン・ロウハニ大統領を訪問し仲介を試みていた。しかし、その結果は、イラン指導者の「対米拒絶」の断言を引き出し、かえってイランの頑なな反米意識を確認することになった。加えて、安倍首相のイラン訪問に、時と場所、狙われた船舶が符丁する「米国の肩を持つ仲介者への見せしめ」という憶測を妨げない攻撃事件が発生した。

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