対イラン戦争の寸前で身を翻したUAEアブダビ

執筆者:池内恵2019年6月30日

5月初頭から急激に高まった米国とイランがペルシア湾で睨み合う緊張の高まりは、5月12日に何者かによりUAEフジャイラ沖でのタンカーなど4隻への攻撃が発生したところで一触即発の雰囲気に包まれ、6月12−14日の安倍首相イラン訪問中の6月13日にホルムズ海峡の出口付近のオマーン湾で日本所有を含む2隻のタンカーへの攻撃が行われてさらに緊迫の度を高めた。そして6月20日にイランが米軍の無人偵察機(ドローン)を撃墜する(イランは自国領空内に入ったため撃墜したと主張しており、『NYT』によれば米政権内にも、海軍の主張にもかかわらずドローンがイラン領空内に入ったのではないかと疑う声があるという)ことによって、最高潮に達した。

この緊張は、「6月20日夜にトランプ大統領がイラン攻撃を一旦命じ、その後取り止めた」とNYTなどで報じられ、21日朝にトランプ大統領自身が、必ずしも真実かどうかは定かではないが一連のツイートで経緯を公開したことで、大きな関心を集めつついったん収まったが、今後も予断を許さない。

この間に注目される動きが、UAEアブダビの「後退」だろう。UAEアブダビは米国の対イラン「最大限の圧力」政策を、イスラエルと共に推進し、サウジアラビアのムハンマド(MBS)皇太子や、米国トランプ政権幹部に吹き込んできたと見られる。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。