ここのところ筆者が力を入れているのは、中東圏への情報発信である。特に、ドバイのアラビア語紙『アッ=ルウヤ』に毎週、国際安全保障や中東問題に関するコラムを寄稿するようになって、かなり多くの時間と労力を割くようになった。

また、アラビア語版だけでなく、英語版も作成して、アブダビを拠点にした安全保障シンクタンクのウェブサイトに適宜掲載してもらうことにした。湾岸の国際政治・安全保障と東アジア諸国の関与については、イランや欧米などでも関心が高く、アラビア語以外に英語でも発信しておくことが様々な利益につながると考えるからである。

これまでは中東から情報を集めて分析し、日本語でその結果を発表するのが主だったが、グローバル化や、中国を中心にした東アジア経済の台頭により中東が西欧・米国ではなくアジアの方面を見始めると、逆に日本人の視点からの中東分析にも若干の需要が出てきたようである。

日本側から発信しておくことで、様々な反応が得られ、そこからまた分析に使える情報も得られる。日本は中東への情報発信が政治レベルで少なすぎるため、どうしても狭い二国間関係の中で得られる情報に依存し、多国間の動きに何周も乗り遅れる傾向がある。日本の中で、イラン情報とサウジ情報とアブダビ情報と米国情報のすり合わせと総合判断が乏しく、セクショナリズムで処理されているからである。日本は組織力と、組織に属した人間のハードワークには定評があるが、その反面、個人の力が十分に発揮されないきらいがある。

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