板門店での金正恩党委員長、トランプ米大統領、文在寅韓国大統領(左から)[KCNA VIA KNS](C)AFP=時事

 

 しかし、今回の板門店会談をドナルド・トランプ米大統領はなぜ提案し、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長はこれを受け入れ、さらにこれまで消極的だった実務協議の再開に応じたのだろうか。まず、北朝鮮側の事情を見てみよう。

中国、ロシアへの接近

 ハノイ会談の決裂は金党委員長にとっても生涯で最大の挫折であったとみられる。ハノイでの首脳会談で経済制裁解除を勝ち取って帰国しようとしたが、ハノイでトランプ大統領から突き付けられたのは、北朝鮮が全面武装解除する「リビア方式」の要求だった。

 北朝鮮はトランプ大統領とマイク・ポンペオ米国務長官、ジョン・ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を分断しようと、ポンペオ長官やボルトン補佐官への攻撃を強めた。さらに「正しい計算法」という言葉で、「リビア方式」を取り下げるよう米国側に要求を続けた。

 金党委員長は、4月25日にウラジオストクで、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と初めての首脳会談を行った。さらに5月初めには短距離ミサイルの発射という揺さぶりを掛けた。6月20、21両日には習近平総書記(国家主席)の、中国の最高指導者として14年ぶりの訪朝も実現した。膠着状態を打開するためにロシア、中国との接近を図った。

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