裏目に出た安倍首相の「2島決着」路線

執筆者:名越健郎2019年7月3日
戦略ミスか、してやられたのか(6月29日、日露首脳会談に臨むプーチン大統領=左=と安倍首相=右=)(C)時事

 

 6月29日のG20(主要20カ国・地域)首脳会議閉幕後に行われた日露首脳会談は進展がなく、平和条約交渉がすっかり暗礁に乗り上げた印象を与えた。双方は交渉継続では一致したものの、ロシア側の後ろ向きの姿勢が目立った。ロシアにとって日露平和条約締結の優先度は低下しており、安倍晋三首相在任中の平和条約合意はもはや絶望的だ。「4島返還」の旗を降ろし、「2島返還」で合意にこぎつけようとした安倍政権の交渉戦術は裏目に出ている。

大統領が後ろ向き発言連発

 会談後の共同記者発表で安倍首相は、「戦後70年以上残された困難な問題について立場の隔たりを克服するのは簡単ではない。しかし、乗り越えるべき課題の輪郭は明確になってきている」と難航を認めた。ウラジーミル・プーチン露大統領は、日露関係を新たな段階に引き上げる取り組みの必要性を指摘しながら、「この取り組みの成功こそが信頼強化を促進し、最も困難な問題を解決するための環境を作る」と述べた。発言は事務的なレトリックであり、交渉長期化を示唆していた。

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