「海幸山幸神話」の舞台という伝承がある鵜戸神宮(宮崎県日南市、筆者撮影)

 

 生業と住む環境の差は、習俗、気質、文化の違いを生み、しばしば争いを起こした。特に「海と陸」の対立の根は深く、神話にもなっている。それが天孫降臨ののちに起きた「海幸山幸(うみさちやまさち)神話」である。

農夫を食べる「目ひとつの鬼」

 山の幸を手に入れる能力(霊力)をもっていた山幸彦(彦火火出見尊=ひこほほでみのみこと=)は、海の幸を得る力をもつ兄の海幸彦(火闌降命=ほのすそりのみこと=)と試しに幸を取り替えてみることにしたが、どちらも獲物がなかった。海幸彦は後悔し、山幸彦に借りた弓矢を返したが、山幸彦は海幸彦の釣針をなくしていた。山幸彦は自身の太刀を鋳つぶして、山のように釣り針を作ったが、海幸彦は許さなかった。山幸彦は途方に暮れたが、塩土老翁(しおつちのおじ)に救われた。海に誘われた山幸彦は海神の宮に至り、豊玉姫と出逢い、甘い生活を送り、釣針も見つかった。そして3年後、山幸彦は故郷に戻ってきて、海幸彦に仕返しをする。また、身籠もった豊玉姫が浜辺にやってきて、子を産む。その時山幸彦は見てはいけない産屋の中を覗いてしまったため、豊玉姫は怒って、子を捨て、海に続く道を閉ざして帰って行ってしまった……。

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