北京の「中国国家博物館」の軍事コーナーでは、国民に誇示する分野が一目瞭然でわかる。とりわけ対艦弾道ミサイルと空母が目を引く(筆者撮影)

 

 米中両軍などがつばぜり合いを続ける南シナ海で、中国人民解放軍が“空母キラー”と呼ばれる対艦弾道ミサイル(中距離弾道ミサイルとみられる)を同海域に向けて発射したと、7月2日に米『CNBCテレビ(電子版)』が報じた。米国防総省も翌3日、これを事実であると公表し、中国による南シナ海の軍事拠点化を強く非難した。

 しかし中国国防省はこれに対して5日、ミサイルの詳細には触れず、「実弾発射を伴う定例の軍事訓練は行ったものの、特定の国を対象にはしていない」とする声明を出した。

 現時点ではどちらの主張が正しいのか不明だが、南シナ海に向けて(または南シナ海の人工島から)対艦弾道ミサイルの発射が事実であれば、実験を行ったのは初めてとみられる。

 軍事力の「量」だけでなく「質」をも誇示することで、「自由の航行」作戦で艦艇が南シナ海や台湾海峡を航行する米海軍の動きを牽制し、台湾有事などの際に米軍を近づけさせない「A2/AD」(接近阻止・領域拒否)の能力を誇示することが念頭にあるとみられる。

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