北京の「中国国家博物館」の軍事コーナーでは、衛星測位システム「北斗」が注目の的だ(筆者撮影)

 

 今回発射したとみられるのは、2015年9月の「抗日戦争勝利70周年」の軍事パレードで注目された中距離弾道ミサイル「DF(東風)-21D」(推定射程1750キロ。2700キロとの中国側の指摘もある)、「DF-26(同4000キロ)のどちらかのようだ。

 どちらもすでに配備済みで、その後も改良を重ねている。当然のことながら、射程は日本をすっぽりと覆う。

 本稿でなぜ繰り返し「中距離弾道ミサイル」を指摘するかというと、中国軍が対米「A2/AD」(接近阻止・領域拒否)能力の中核の1つと位置づけているだけでなく、「量」(数)と「質」(射程距離など)で米軍や日本の脅威となっているからだ。

 2019年2月、米国が1987年にソ連との間で結んでいた「中距離核戦力(INF)全廃条約」から離脱するとロシアに通告したニュースは、世界に衝撃を与えた。条約は8月に失効する。

 この条約は、地上発射型の射程500~5500キロ(米軍の中距離の規定は3000~5500キロ)のミサイルの保有を禁止したもので、対象は潜水艦発射の弾道ミサイル(SLBM)で、艦艇・航空機からの巡航ミサイルは条約の対象外だった。

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