1960年1月、新安保条約に調印する岸信介首相(安倍首相の祖父、前列右から2人目)とアイゼンハワー大統領(同3人目)。まさに冷戦真っ只中だった (C)時事

 

 ここまでの話は、いわば大国同士で図式的に成り立つ、抑止の論理的な条件ということになります。

 では「拡大抑止」となるとどうなるのか。

 これは、日本のような小国が、パートナー国と同盟関係にあることによって、同盟の抑止力の恩恵を被ること、それが、拡大抑止です。もっともこれも、大国同士の抑止関係に結局は依存しているわけです。

同盟であることの「利益」「不利益」

 どういうことか。抑止を提供する側の立場からすると、同盟国の防衛、つまりアメリカにとって日本を防衛することには利益(A)がある、ということです。その利益とは、盟主国としてのメンツであるとか、地政学的に日本が中国を封じ込めるには必要――昔はソ連封じ込めのためでしたが――だから、日本を守るべき実質的な意味があるということ。あるいは日本を失ったら、アメリカは太平洋を隔てて丸裸も同然だから、自国の防衛にとって日本を失うことなどあり得ない。こういう利益が考えられるわけです。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。