プーチン「大国志向」には「主権問題」で挑め

執筆者:フォーサイト編集部2019年7月29日
プーチン政権の世界観が早わかり!

 世界一の国土を有するロシアがいかに大きいかは、1710万平方キロメートルという面積より、「冥王星の表面積より広い」と聞いた方が実感しやすいかもしれない。西はフィンランドやバルト三国、ウクライナと接するヨーロッパ部分から、中国、北朝鮮、海を隔てて日本と接する極東アジアまで、「ロシア」と一括される地域はあまりにも広大で、民族も宗教も様々だ。

 しかも、その境界が必ずしも明確でないことが、この国の理解を一層難しくしている。そもそもロシアとはどこまでなのか――。

 そのアイデンティティを巡る視点から、ロシアの対外戦略とウラジーミル・プーチン大統領の秩序観をひもとくのが、6月25日に刊行された小泉悠さんの『「帝国」ロシアの地政学 「勢力圏」で読むユーラシア戦略』(東京堂出版)だ。

 好評連載「サイバーウォー・クレムリン」でもお馴染みのロシア軍事専門家に、本書の骨子やプーチン大統領の狙い、北方領土問題について聞いた。

――本書執筆のきっかけは?

 お話をいただいたのは2018年秋。ちょうどプーチン大統領がウラジオストックで開催された「東方経済フォーラム」で「前提条件なしの平和条約の締結」を提案し、今年6月の大阪G20サミットでの日露首脳会談で大きな合意があるのでは、と期待が高まっていた頃でした。

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