米ワシントンのUAEアブダビ論

執筆者:池内恵2019年8月1日

ペルシア湾情勢におけるUAEの急展開の重要性について、補足するために、奇妙な状況を顕著に示す文献を紹介しておこう。今年1月に米の保守系『ナショナル・インタレスト』誌に掲載された次の論考である。

"The UAE Will Triumph Over Iran in the Next Middle Eastern War," The National Interest, January 19, 2019.

著者のマイケル・ルービン氏はワシントンDCの保守的なシンクタンク「AEI(アメリカン・エンタープライズ・インスティチュート)」の研究員で、反イラン・反トルコ(エルドアン政権)・反カタール、反イスラーム主義、親イスラエル・親サウジ・親UAEの論陣を張る有力な中東政策論客である。

ここでの議論は特に極端で、UAEがイランに軍事力で優っている、というのである。中東の現実を少しでも知るものには、にわかに信じがたい議論である。しかしこれがワシントンDCで大手を振るって流通する言説なのである。

対イラン強硬策を支持する議論の根底には、米国がイランと戦争をした場合、イランに向かい合う米同盟国が自らを守れる(つまり米軍はそれほど必要ない)という、かなり疑わしい、特にUAEに関しては大いに疑わしい想定がある。そのような想定は、このようなかなり極端な議論の数々に支えられている。

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