6月20日の「トランプ・ショック」以後の中東

執筆者:池内恵2019年8月12日

現在の中東政治を見る際に、2つの日付を頭の隅に(あるいは真ん中に)置いておくといいだろう。1つは「2019年6月20日」である。

この日に、イランが米国の無人偵察機(ドローン)を撃墜したのに対して、トランプ大統領が一旦イラン攻撃を支持しながらそれを寸前で取りやめた、とされる一連の動きは、ペルシア湾の両岸の諸国、すなわちサウジアラビアやUAE、イランの双方の情勢判断に大きな影響を与えている。

イランにとっては、6月20日のトランプ大統領の急転回は「トランプ大統領の強硬路線は見せかけであり、実際に軍事侵攻をする意思はない」という確信・自信を深めさせる決定的な出来事だった。また、強硬派の側近を採用し、派手に拳を振り上げてみせるトランプ大統領は、実際には対話を求めている、と信じるに至っただろう。

逆に、サウジやUAEなど米陣営に与してきた諸国にとっては、トランプ大統領による安全保障の約束の信頼性の低下や、トランプ政権の見かけ上の対イラン強硬策に追随することの危険性を思い知らせただろう。

トランプ政権の中東政策に深く関与し方向づけてきたイスラエル・ネタニヤフ政権にとっても打撃だろう。

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