中東情勢は「緊張高まる」「混迷深まる」といった常套的な形容句を付して報じられ、論じられがちである。しかし実際には、しばしば緊張は緩み、混迷が若干和らぐ「凪」の状態の時期がある。現在はそういう時期だろう。

この関係で、現在の中東情勢を見るためのもう1つの日付は「2019年9月17日」であると言ってもいいだろう。

その理由は、9月17日に投票のイスラエルの総選挙でネタニヤフ政権の存続が決まるまでは、米国もペルシア湾岸諸国も、そしてイランも、態度を決められないからである。

米・イランの緊張の高まりと、サウジ・UAEなどアラブ産油国(GCC諸国)とイランとの対立の激化を基調とする現在のペルシア湾情勢の背後には、イランの脅威の除去を最大の外交・安全保障上の課題とするイスラエル・ネタニヤフ政権の影響が大きいことは周知の事実である。

ネタニヤフ首相と政権与党リクードは10年に渡り連続して政権を担ってきたが、今年4月9日投票の総選挙ではリクードは明確な勝利を収められず、連立交渉では世俗派右翼政党と宗教政党との対立を乗り越えられず、組閣に失敗し再選挙となった。

ネタニヤフ政権が推進してきた、サウジ・UAEなど湾岸産油国の取り込みによるパレスチナ問題の有利な解決や、米トランプ政権を動かしてイランに最大限の圧力をかけて屈服させる政策は、壁に突き当たっている。また、長期政権によりネタニヤフ首相本人の親族を含む腐敗の告発が進み、かつての連立相手や同僚が離反する傾向がある。

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