英「保守党」党首に選ばれて早々、EUとの対決姿勢を明確にしたボリス・ジョンソン。真価が問われるのはこれからだ (C)EPA=時事

 

 もしこれが平時だったら、ボリス・ジョンソンはたぶん、憎まれつつも愛される政治家になり得たのでないか。記録には残らないが、記憶には残る。その程度の英国指導者としてである。

 気さくで気取らず、サービス精神が旺盛。その行動は、深い思慮に基づいているとは見えないものの、大衆の感覚に沿っている。失言暴言が多い一方で、それが話題の種にもなる。

 この種のスタイルの政治家は、欧州で決して珍しくない。ロシア大統領ボリス・エリツィン、フランス大統領ニコラ・サルコジ、イタリア首相シルヴィオ・ベルルスコーニといった人物は、地の性格か周到につくりあげたイメージかはともかく、そうした個性を売りにしていた。ジョンソンも彼らと同様にお騒がせ政治家として名を売り、国民を困惑させつつ、世界を笑いに包んでくれたに違いない。

 しかし、今はお国の一大事の時である。果たして彼の出番かどうか。

 一部の英国民は「彼の派手な振る舞いこそが硬直した状況を打開してくれる」と期待した。しかし、多くの人々はその場違いなパフォーマンスに顔をしかめる。何より、海峡を隔てて事態の推移を見守る欧州連合(EU)の幹部や加盟国の首脳は、この期に及んでジョンソンのような人物を選んだ英国にあきれている。

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