「GSOMIA破棄」で揺らぐ米韓同盟(下)

執筆者:平井久志2019年9月3日
米韓同盟が揺らいでほくそ笑むのはこの2人か(C)AFP=時事
 

 文在寅(ムン・ジェイン)政権のGSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)問題の対応を見ていると、GSOMIAの延長か破棄かという問題自体への判断というよりは、GSOMIAを「外交カード」にしようとしているようにみえる。

GSOMIAの「外交カード」化

 GSOMIAを破棄して困るのは韓国、日本よりは米国であろう。平常時であれば、韓国政府が主張するように「日米韓3国の防衛機密情報共有に関する覚書」(TISA、2014年12月締結)を活用して米国を仲介とした情報交換でも大きな問題はないだろう。

 しかし、GSOMIAが破棄された状況で、朝鮮半島有事に直面すれば、米国は日米韓の情報交換において複雑で深刻な問題を抱える。もし、北朝鮮がミサイルを発射し、そのミサイルが韓国や日本を攻撃目標にしていれば、数分以内に対応を決めなければならないにもかかわらず、情報の共有に時間と手間が必要になる。

 文在寅政権は、GSOMIA破棄という状況を生み出すことで、GSOMIAという外交カードで、日本政府には韓国を「ホワイト国」に戻すことを要求し、米国には積極的な介入を要求しているようにみえる。

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