秋篠宮ご一家が訪問され、ワンチュク国王夫妻とも歓談されたことで再び注目を集めた「幸せの国」ブータンだが……(C)AFP=時事
 

 梅雨の雨が降り注いでいた7月16日――。時刻は正午を過ぎていたが、ブータン人留学生のダワ君(仮名・20代)は千葉県船橋市内のアパートで、布団に横たわったままだった。宅配便の仕分け現場で徹夜のアルバイトをこなした後、2時間ほど前に眠ったばかりなのだ。

「ダワ!」

 名前を呼ばれ目を覚ますと、部屋の入り口にルームメイトのタンディン君(仮名)が立っていた。普段は明るい彼の表情が沈んでいる。

 アパートはタンディン君らブータン人留学生3人とシェアしている。彼とは今朝、アルバイトから戻った後に言葉を交わした。在籍する日本語学校から「留学ビザの更新結果が出た」との連絡を受け、ダワ君と入れ違いにアパートを後にしていた。

「ビザは更新できたのか?」

 母国語のゾンカ語で話しかけると、タンディン君がポツリと漏らした。

「いや、ダメだった。ブータンに帰ることになった……」

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