9月17日のイスラエル総選挙の投票が行われ、ネタニヤフ首相の敗北が決定的となった。10年に及んだネタニヤフ時代がついに終焉を迎えようとしている

この欄では、中東情勢の決定的要因は9月17日のイスラエルの総選挙投票であり、外見上様々な派手な動きがあるにしても、実際は「選挙結果待ち」であると指摘してきた。

ネタニヤフ首相の劣勢はすでに4月9日の総選挙で明らかになっていた。4月9日の投票ではネタニヤフが率いる右派政党リクードは35議席(総議席数は120)で、対抗馬の中道右派「青と白」連合と同議席で辛うじて第1党の座を死守したが、今回は31議席。それに対して「青と白」は33議席で、単独で第1党となった。

イスラエルは単独で過半数を取った政党はこれまで一度もなく、常に連立交渉で内閣が構成される。名誉職的な大統領が各政党の党首から首班指名の希望を聴取して、もっとも希望が多かった政党の党首を大統領が首相候補として指名し、首相候補が各党と連立交渉を行うという手続きが慣例である。

4月9日の選挙結果に基づき、ネタニヤフは宗教右派・世俗右派を含む右派政党の連合で61議席、わずか1議席の過半数を確保する見込みとなったため首相候補として連立交渉を進めたが、宗教的な超正統派を支持基盤とする右派政党と、民族主義的な世俗主義右派とは大きく政策が異なる。世俗右派政党「イスラエル我が家」(この時は5議席)を率いるアヴィグドール・リーベルマン元国防相・外相が、宗教政党などがネタニヤフに受け入れさせてきた超正統派の兵役免除などを拒否して連立合意を拒否したためにネタニヤフは組閣できず、下野を拒否したネタニヤフが議会解散、総選挙に打って出て、9月の「やり直し」選挙投票となった。ここで明確にネタニヤフに退陣要求の民意が突きつけられた形だ。

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