イスラエル連立交渉の選択肢

執筆者:池内恵2019年9月21日

ネタニヤフ首相率いる右派リクードが第1党の座を失い(31議席)、旧ネタニヤフ陣営を多く含む「青と白」連合がガンツ元参謀総長を党首として第1党に躍進(33議席)したイスラエル内政は、イスラエル議会(クネセット)全120議席の過半数61議席を、誰を首相とし、どの政党を組み合わせて得るか、その際にどういう条件が合意されるかという、複雑な連立交渉の段階に入る。

現状ではガンツ率いる「青と白」連合と中道・左派諸政党(アラブ系諸政党13議席を含む)が57議席、ネタニヤフ率いるリクードと宗教右派の連合が55議席を確保しているが、いずれも61議席に及ばず、「デッドロック」となりかねない状況である。

連立の組み合わせの可能な選択肢と、それぞれの不利な点を整理してみよう。

(1)「ネタニヤフ抜き大連立」

第1の可能性は、挙国一致的に「ネタニヤフ抜き」の政権を樹立するという、今回の選挙の実質上の主要なテーマに正面から取り組む連立である。

「青と白」連合主導のガンツ元参謀総長を首相とし、リクード党と連立しネタニヤフだけ排除する。これは中道・左派リベラル派から右派までの大連立である。ここにはユダヤ教超正統派や宗教右派や、極右民族主義的な世俗右派、あるいはアラブ系諸政党を、必ずしも入れる必要はない。しかし第1党の「青と白」と第2党リクードだけでは、合わせて64議席でしかなく、ネタニヤフに加えて同調して4人が抜ければ過半数割れするため、不安定である。そもそもリクードからネタニヤフだけを取り除くという交渉がうまくいくとは限らない。

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