日イラン外相会談の様子 (C)AFP=時事

 

 いまから10年ほど前のこと。駐日イラン大使が日本のメディアの元テヘラン特派員を集めて、懇談をもった。イランの核兵器開発疑惑が持ち上がっていた時で、イラン政府の立場を説明する狙いがあった。

 私にも声がかかり、東京・港区内の大使公邸に赴いた。7~8人の元特派員を前に、まず大使が核の平和利用の権利を語った。「イラン・イラク戦争で大きな被害を被ったイランは、平和の大切さをどの国よりも知っています」と、濃縮ウランの製造や原発建設など同国の核燃料サイクル計画は核兵器開発ではないと強調した。その後、元特派員からの質問に一通り答えた大使は「ではこれからは食事をしながら話を続けましょう」と、続きの広間に一同を案内した。

 テーブルに着席すると、大使が「きょうは皆さんを懐かしいイラン料理でもてなします」と述べ、給仕が大きなお皿に盛った料理を運んできた。脇から差し出される大皿から、各自が好きなだけとる。

 歴代大使は本国からイラン人の料理人を帯同している。イラン風のヨーグルト入りのサラダ、野菜オムレツと前菜が続いた後、主菜が運ばれてきた。羊の焼肉カバーブ、そして次に差し出された料理に心は躍った。イラン料理で最も好きなゴルメサブジだったからだ。そしてひと口食べて、そのうまさに唸った。テヘラン在勤以来、四半世紀ぶりの懐かしい味だった。しかも本国から帯同した料理人だけあって実に洗練されている。大使と元特派員たちのやりとりも上の空で3回もお代わりをした。

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