倉林秀男・河田英介『ヘミングウェイで学ぶ英文法』

評者:鴻巣友季子(翻訳家)

2019年9月28日

あっという間に5刷、異例の「英語学習参考書」ヒットのワケ

くらばやし・ひでお 1976年生まれ。杏林大学外国語学部准教授。日本ヘミングウェイ協会運営委員。かわだ・えいすけ 1972年生まれ。国士舘大学政治経済学部講師。

 発売前から話題になり、発売とほぼ同時に増刷が決まり、あっというまに第5刷まで刷り重ねているという(7月14日現在)。「英語学習参考書」では異例のヒットではないか。

 なぜこんなに受けているのだろうか?  まずは、学校の英語科目が文法や読解法よりコミュニケーション、「話して通じるスキル」に重きを置いて数十年、その皺寄せと反動が起きていること。ご存じでしょうか、学校で英文法をあまり教わらないので、いまの高校・大学生の多くは構文が理解できず、昔より英文が正確に読めなくなっているのです。

 そんななかで、充実した英文法学習を求める人たち、より高度な読解力を望む人たち、学校卒業後も英語力のメンテナンスに励む人たちが、本書を競って手にしている感がある。

 ヘミングウェイを教材に選んだのも、圧倒的勝因ではないか。英語初中級者でもなんとか一気に読める分量で、語彙や構文はわりあい平易だが、実は読み解くほどに、重層的な解釈や味わいが浮かびあがってくる。

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