念願かなって米国から久々の大型武器供与を受けた台湾。しかし、米国は「昔の米国」ではなくなっていた……。[台北発]「グッドニュースが近いぞ」 台湾の袁健生・駐米代表(駐米大使)は九月下旬、首都ワシントンDCのある昼食会でゲイツ米国防長官からそう耳打ちを受けた。 在ワシントン歴が二十年に及ぶという袁氏は外交官出身だが、本質は手練れのロビイスト。国民党が政権から離れた時期も、ホワイトハウスの隣にあるビルに「国民党駐米代表」という肩書で豪華なオフィスを構え、米国の議会を中心とする台湾人脈を培ってきた。袁氏は米国の武器供与への馬英九政権の期待を背に着任早々から激しく働きかけていた。その成果が上がった瞬間だった。 袁氏は台北に「武器供与は問題ない」との電報を打った。馬総統が安堵したのは間違いない。自ら袁氏に「本当か」と念押しの電話をし、側近に「これで対中関係とのバランスが取れる」と漏らした。 二〇〇八年五月の就任以来、対中関係改善を進めた馬政権にとって、米国から台湾への武器供与の実現は「対中関係を改善して台湾海峡情勢を安定化させ、陳水扁前政権が過激な路線で失った米国の信頼も取り戻す」という最大の外交方針が試されるケースだった。米国が動かなければ「米国は対中接近を嫌い、武器供与を渋った」と野党・民進党に叩かれるのは目に見えている。

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