「米中露」関係激変で遠のいた北方領土交渉

執筆者:名越健郎2019年9月30日
意味深長な視線を交わす中露両首脳だが……(C)AFP=時事

 

 通算27回目となった、9月5日のウラジオストクでの安倍晋三首相とウラジーミル・プーチン露大統領の首脳会談は進展がなく、交渉継続を決めただけだった。28回目は、11月にチリのサンティアゴで開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会合に合わせて行われるが、前進はなさそうだ。

「私とウラジーミルの手で平和条約を締結する」との首相得意のフレーズは色褪せ、これを信じる国民はほとんどいないだろう。各紙の社説が訴えるように、対露政策の再構築が不可欠だ。

 現時点で交渉を総括するなら、北方領土交渉不調の最大の要因は、日本のメディアが指摘するロシアの国内事情よりも、米中露の3国関係が変質したことが大きい。

対日強硬路線を機関決定

『産経新聞』(9月3日)は日露外交筋の情報として、ロシアの最高意思決定機関「安全保障会議」が2019年1月中旬の会合で、対日関係について、「交渉を急がず、日本側のペースで進めない」との方針を決めていたと報じた。本格交渉が始まる前に、交渉方針を討議し、第2次世界大戦の結果、4島がロシア領となったことを日本が認めることや、性急に交渉を進めず、徹底的な検討が必要とすることを申し合わせ、プーチン大統領も了承したという。

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