ひたすら故人を「悪人」に仕立て逃げ切りを図ろうとしている八木会長(左)と岩根社長(C)時事
 

「関西電力」の八木誠会長、岩根茂樹社長ら幹部20人が総額3億2000万円に上る現金、金貨、金杯、商品券などを受け取っていた事件は、特別背任、脱税などに問われかねない悪質な内容であり、10月2日の記者会見で関電が公表した社内処分で済む話ではない。

 それ以上に、日本の原子力に与えた打撃はきわめて深刻だ。

「東京電力」の福島第1原子力発電所事故が原子力の技術的な信頼性を崩壊させたとすれば、関電の今回の“高浜事件”は、かろうじて残っていた原子力を担う人と組織への国民の信頼を吹き飛ばしたからだ。

 だが、高浜事件を関電幹部の規律の欠如、金品を贈った高浜町の元助役(故人)の「恫喝」など特異性を原因として総括するのは、問題の矮小化である。より大きな視点に立てば、日本の原子力発電が、すべての立地地域ではないにせよ、かつての「NIMBY(Not In My Back Yard=自分の近所には置くな)」から、「KIMBY(Keep In My Back Yard=自分の近所に維持してくれ)」に変わっていたことを示しているからだ。

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