米朝実務協議は「決裂」と表明した、北朝鮮の金明吉首席代表 (C)EPA=時事
 

 米国と北朝鮮の実務協議が10月5日、厳重な警備のもと、スウェーデンのストックホルム郊外で行われたが、約8時間半に及ぶ協議の末に合意を生み出すことなく終了した。

 協議を終えた北朝鮮の金明吉(キム・ミョンギル)首席代表は同日午後6時半ごろ、ストックホルムの北朝鮮大使館前で会見し、「協議はわれわれの期待に応えることなく、決裂した。私はこれを極めて不快に考える」との声明を発表した。

 一方、米国務省のモーガン・オルタガス報道官は「北朝鮮代表団の声明は約8時間半にわたった議論の内容や精神を反映していない。米国は創意的なアイデアを持って行き、北朝鮮のカウンターパートたちとよい議論をした」と述べ、北朝鮮側の「決裂」という評価に反論し、協議が有意義であったとした。

 米朝実務協議は今年2月にハノイで行われたドナルド・トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の首脳会談が決裂して以来、約7カ月ぶりのものだった。

 北朝鮮の非核化や米朝関係の改善についての協議は、朝鮮戦争以来約70年間続く米朝の敵対関係を解消するための交渉とも言え、1回の実務協議で問題が解決するとは、誰も考えてはいない。その意味で、北朝鮮の反応はオーバーアクションであったが、敢えてそうした評価を下すことで、今後の協議を有利に転換していこうという戦術とみえた。北朝鮮の「決裂」と米国の「よい議論」という、相反する評価の中に何があるのか考えてみたい。

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