「ウクライナ疑惑」を切り抜けようともがいているが……(C)AFP=時事

 

 ドナルド・トランプ米大統領に対する下院の弾劾調査が始まった。

 ウォロディミル・ゼレンスキー・ウクライナ大統領との電話会談で、民主党のジョー・バイデン前副大統領と息子のハンター氏についての捜査を要求したことが弾劾相当と、民主党は追及している。その後トランプ大統領は中国にもバイデン氏の捜査を促しており、その行動は世界を驚かせている。ここでは、日本のメディアもほとんど取り上げていないが、ウクライナ大統領との電話会談でのもう1つの重要発言も精査したい。

 それは、「地下言説」とも呼ぶべき根拠のない世界に、トランプ大統領がどっぷり浸っている事実を浮き彫りにするものである。

 元首席戦略官のスティーブン・バノン氏らが率いる「右派ポピュリスト」(もう1つの右翼と呼ばれる「オルト・ライト」とも)の影響下にトランプ大統領は今も置かれ、2020年大統領選では、支持基盤である彼らの言説やフェイクニュースを徹底的に使っていく戦略が見えてくる。

「クラウドストライク」という企業

 トランプ大統領は7月25日、ウクライナのゼレンスキー大統領との電話会談で、2つの要求を行った。1つは、弾劾事案とされるバイデン親子への捜査要求である。そしてもう1つ、「クラウドストライク」(以下、CS社)という企業の名前を挙げて、ロシア疑惑の発端についてウクライナ政府に捜査を要求したのだ。

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