「香港」は誰に殺されるのか

執筆者:樋泉克夫2019年10月15日
13日のデモでは爆弾が使用された(C)AFP=時事

 

「逃亡犯条例」改正問題に端を発し、林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官をトップとする香港政府への不信・不満を経て拒否の姿勢を強く打ち出すに至った街頭行動は、開始から4カ月を経ても収拾への道筋が一向に見えそうにない。

 一時は下火に向かうかに見えたが、10月5日になって林鄭政権がデモ隊の覆面を禁止する「緊急状況規則条例」を発動したことで、再び過激化に転じた。若者の多くは様々な方法で顔面を覆い隠して街頭に繰り出し、反政府デモを展開する。もはや政府の権威は地に落ちたも同然であり、無政府状態一歩手前と言っても過言ではないだろう。

 こうなってしまった香港を思うにつけ、誰が口にしたかは判然としないが、「独裁は恐ろしい、しかし、渾沌はもっと恐ろしい」という言葉に奇妙なリアリティーを感じてしまう。香港は「渾沌」のままに時を送るしかないのか。

北京が動いているフシは見られない

 長い人類の歴史に照らして考えてみても、どのような強権ぶりを発揮する「独裁」であったにしても、「渾沌」を平穏に転じさせるような便法は容易には見つかりそうにない。一強体制と伝えられて久しい習近平政権にしても、それは同じだ。内外から必ずや強烈な反発を招くだけに、強権発動には躊躇せざるを得ないだろう。

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