トルコ「シリア侵攻」エルドアン大統領の「トラウマ」と「打算」
2019年10月17日
トルコ軍は2019年10月9日、北シリアに越境攻撃を開始した。標的は、これまでシリアにおいて米軍の対イスラム国(IS)掃討作戦で地上部隊の役割を果たしてきた「クルド民主統一党(PYD)」である。
侵攻は、米国のドナルド・トランプ大統領とトルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領が10月6日に電話会談を行った後、トランプ大統領が北シリアからの米軍撤退を決定して実現可能となった。
しかし、いざトルコが侵攻すると、トランプ大統領は“トルコが一線を越えれば大規模な経済制裁を課す”と宣言。欧米諸国ばかりか中東の大部分の諸国も、一斉にトルコを非難した。国際社会を敵に回す侵攻にトルコはなぜ踏み切ったのか。
拡大したPYDの支配領域
そもそも米国とPYDが対ISで手を結んだ経緯を振り返ろう。
シリアで2014年にISが台頭すると、米国はトルコに共闘を求めたが、トルコは当初消極的だった。むしろシリアとの国境管理を放置し、ISや他のイスラム系勢力がトルコ側から流入するのを黙認することで、アサド政権の弱体化を狙った。
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