16歳の少女の “How dare you”という火を吹くような糾弾が世界の注目を集めたかと思えば、日本では国会議員の公党党首が世界的な人口増について、「あほみたいに子供を産む民族はとりあえず虐殺しよう」と公言して騒動を起こしている。

 後者の暴言は論外として、環境問題が取りざたされると再読したくなる漫画が、岩明均の『寄生獣』(講談社)だ。

 最初にお断りを。今や古典的名作と言って良い漫画でもあり、今回はネタバレ全開で書く。

 万が一、未読という方は先に漫画をお読みいただきたい。全巻大人買いの価値十分な文句なしの傑作だ。

表層的なテーマは「間引き」

 「地球上の誰かがふと思った」

 「人間の数が半分になったらいくつの森が焼かれずにすむだろうか……」

 第1話の冒頭には、宇宙から地球を見下ろす遠景をバックに、話者を明示しないこんなナレーションが流れる。

 この言葉が示す通り、表面上、『寄生獣』のテーマは人口抑制、露骨に言えば人間の「間引き」だ。パラサイトと呼ばれる出所・正体不明の寄生生物は、人間の頭部を乗っ取り、高い戦闘能力を持った人食い生物に変える。パラサイトは「この『種(=人間)』を食い殺せ」という「命令」を自覚し、それを行動原理とする。

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